ある日、会社に置いてある雑誌をパラパラとめくっていたら1枚の写真に心を奪われた。
それは1本のシダレザクラの写真であった。
たわわに花を咲かせた枝が写真を通り抜けてこちらに降りそそいでくるようなその姿は圧巻であった。
その桜は三春の滝桜といい日本三大桜の一つだそうだ。
樹齢は約1000年といわれシダレザクラとしては日本最大であり最長寿との説明。
樹齢1000年。
1000年も生き抜いてきたというこの木のパワーをどうしても直に感じたくなり、福島県まで遥々足を伸ばしてきた。
朝もや煙る東京駅に降り立ち、申し込んでおいた日帰りバスツアーの会社の旗を探す。
比較的若めの添乗員さんが多い中、私たちのツアーの添乗員は骨董品のようなきたろうが年を取ったようなおじいさんであった。
修学旅行でいえば3組のバスガイドさんは美人でいいなうちのクラスはハズレだなといったところだ。
おそるおそるおじいさんの側に近づくと、なんとおじいさんは振り向きもせずに「瞳さんですか?」と聞いてきたので度肝を抜かれた。
なぜわかったのだろう?
しかし、その答えはバスに乗り込んだところですぐにわかった。
私と洋子ちゃん以外の旅行客は50代〜70代といった面々なのである。
申込用紙に生年月日を記入する欄があったので年齢的に見抜いたのであろう。
ということで、世にも不安なアンティークツアーのはじまりだ。
といっても私も就業中の身なので小学生の作文のようにちんたらとあった事を書き綴っていくわけにはいかない。
さっさと滝桜の感想を述べて終わりにしたい。
1000年女王は神々しい存在感でそこに佇んでいた。
江戸時代には三春藩が藩の宝として手厚く保護し、柵を設けて根元を踏まれないように配慮したという歴史もあり、大きくなりすぎた大木ゆえに数々の添え木に支えられている姿は痛々しくも見えるが、その側に寄れば老樹が発する気や迫力に包まれ、厳かな気持ちになる。
目を閉じれば1000年前の景色が見えてくるような気さえしてくる。
花は六〜七分咲きといったところだろうか。
満開まであと一息ではあったが、何週間も前にツアーの申込みをするという現実の中、ここまで天気と開花に恵まれれば願ったり叶ったりだろう。
一応私の携帯写メで撮ったピンボケ写真をUPしておく。
あと
こちらにある滝桜開花情報では毎日の画像が見れるので疲れたハートにくちづけを。
ところで骨董品添乗員率いる我がツアーだが、目玉は滝桜と夏井川渓谷のツツジ列車となっていたがツツジはまるでといっていいほど咲いていなかった。
列車を降りる時に骨董品は言った。
「上の方に少しだけ咲いていたんですが、そうですか、みなさん見れませんでしたか。まあ、ね、だいたい滝桜とツツジの開花が合うことはまずないんですがね」
そんならセットにするな、ばか。
※1 タイトル元ネタ
わかる人は30歳以上。